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植込型心臓ペースメーカ

心臓は微弱な電気が流れて動きます。なんらかの原因でこの微弱な電気の流れが止まってしまったり、電気が流れる回数が減ってしまったりします。例えば、60回/分で動いていたのが、30回/分しか動かなくなったりします。そうなりますと、血の流れが悪くなり、少し歩いただけで失神してしまったりします。植込型心臓ペースメーカ(以下ペースメーカと呼ぶ)は、動きづらくなった心臓の代わりに微弱な電気を流し、心臓の動きを補います。また、ペースメーカは心臓が動いている時には、その時に流れる電気を感知して止まるようにできています。

CRT(心臓再同期療法)

心臓再同期療法とは重症心不全に対する新しいペースメーカー療法で、ペースメーカーを使って心臓のポンプ機能の改善をはかる治療方法です。本来のペースメーカーの治療は脈拍の遅い病気をもった患者さんに対して行う治療方法ですが、心臓再同期療法は脈拍の遅い患者さんに対する治療法ではなく、心臓のポンプ機能(特に左心室)に何らかの障害をもった患者さんに対するペースメーカー療法です。

CRT-D(両心室ペーシング機能付き植込み型除細動器)

心不全の患者さんの中には心室の同期障害だけではなく心室頻拍や心室細動といった致死的な不整脈を起こし突然死の危険性を有する患者さんがおられます。そのような患者さんにはどちらも治療できるCRT-D(両心室ペーシング機能付き植込み型除細動器)治療を行うことがあります。
CRT-Dは、心室の同期障害を改善する心臓再同期療法(CRT)と、致死的不整脈による突然死を予防するICD(植込み型除細動器)療法の両方の機能をもった治療機器です。

AED(自動体外式除細動器)

心臓突然死の大半は、心室細動と呼ばれる症状が起こります。心室細動は心臓が小さくブルブルと震えるような動きをすることです。心臓における電気の流れが乱れてしまうことが原因です。この状態では心臓はポンプとしての役割を果たすことができなくなり、血が流れなくなり、短時間で死にいたります。心室細動の治療には、除細動という強力な電気ショックを流し、心臓内の電流の乱れをなくすという処置がとられます。AED(自動体外式除細動器)は短時間で処置しなければ人命に関わるため、空港など公共機関に設置されだしています。

ICD(植込型除細動器)・SICD(皮下植込型除細動器)

ICD・SICDは心室細動の可能性がある患者に対し、いつ心室細動が起きても除細動できるように強力な電気ショックを体内で流す、植込型の医療機器です。ペースメーカとほぼ構造は同じです。ペースメーカと同様に電磁波に影響され、不要除細動ショックが生じる恐れがあります。

SCS(脊髄刺激療法)

慢性疼痛療法のひとつである脊髄刺激療法は、脊髄に微弱な電気を流すことにより慢性の痛みを和らげる治療法です。仕組みはペースメーカとよく似ており、ペースメーカと同様に電磁波に影響され、手足のしびれ等が生じる恐れがあります。

DBS(脳深部刺激療法)

DBSは脳の深部を電気刺激して、その部位の機能を調整してパーキンソン病の症状を改善させる治療法です。仕組みはペースメーカとよく似ており、ペースメーカと同様に電磁波に影響され、ドーパミンが過剰分泌され、めまいやふらつき等が生じる恐れがあります。

電磁波によるペースメーカ・ICD等の不適切作動

電磁波は空間に伝わる電気エネルギーの波です。この電気エネルギーの波が、空気より電気の流れやすい金属などに当たりますと金属の中を電気が流れます。アンテナはこの原理を利用して機器に電気信号を送っています。ペースメーカ・ICD等につながれているリード線は電気が流れやすい金属(プラチナ合金など)でできており、アンテナのように電磁波を受けると電気が流れます。リード線以外に、ペースメーカ・ICD等本体内にプログラム通信用のアンテナ(テレメトリコイル)があり、そのアンテナに電磁波が直接受信される場合があります。この電気がペースメーカ・ICD等にとって雑音(電圧)となります。この雑音によってペースメーカ・ICD等が不適切な動作をしてしまう事を、ペースメーカ・ICD等の不適切作動と呼びます。

心臓ペースメーカ・ICD等に影響を与える電磁波とは

ペースメーカ・ICD等に影響を与える電磁波は、大きく分けて「交流磁界」と「高周波電磁波(無線電波)」の2つがあります。

▼「交流磁界」による影響

ペースメーカ・ICD等の内部には外部との通信用にテレメトリコイルがあり、そこに交流磁界入射されると回路内部に電圧が誘起されペースメーカ・ICD等が不適切作動をする場合があります。また、ペースメーカ・ICD等本体から出ているリード線が体内で1回巻きのコイルを形成しており、このループ面(輪の中)に交流磁界入射されると電流が流れ、回路内部に電圧が誘起されペースメーカ・ICD等が不適切作動をする場合があります。ノイズ発生源として高圧送電線、電磁調理器、万引き防止システム、電気溶接機、自動車のセルモーター、電気溶鉱炉、モーター類、電力設備などがあります。

▼「高周波電磁波」による影響

外部から高周波の無線電波が入射すると、交流磁界の場合と同様にテレメトリコイルやリードが作るループに電流が流れ、回路内部に電圧が誘起されペースメーカ・ICD等が不適切作動をする場合があります。ノイズ発生源として携帯電話、無線機、各種通信機器、携帯電話基地局、5G中継器、高周波ウェルダー、レーダーサイト、放送施設、MRI、マイクロ波温熱治療器などがあります。

電磁波以外にペースメーカ・ICD等に与える影響

電磁波以外にペースメーカ・ICD等に影響を与えるものとして「静磁界」「伝導電流」「交流高圧電界」の3つがあります。

▼「静磁界」による影響

ペースメーカ(ICDは除く)は、検査のために外部から2mmテスラの静磁界を加える(磁石を近づける)と検査用の固定レートで動作するように作られています。このため、検査以外に2mmテスラを超える静磁界にさらされると検査用の固定レートで動作してしまいます。静磁界の発生源として磁石以外に超伝導磁気浮上式リニアモーターカーや核磁気共鳴装置などがあります。

▼「伝導電流」による影響

俗に言う感電による影響です。漏電した電気製品に触れ、体に感じない程度の40μAの弱い電流が人体に流れるだけでペースメーカ・ICD等が不適切作動する場合があります。導電電流の発生源として漏電している電気製品以外に体脂肪計、低周波治療器、電気刺激装置、電気メスなどの医療器具を使った場合などがあります。

▼「交流高圧電界」による影響

人体が5kV/m以上の強力な電界にさらされた場合に、体内に生じる電位差によって電圧が誘起されペースメーカ・ICD等が不適切作動をおこす場合があります。これは、高圧送電線にきわめて接近した場合などに当たりますが、一般に地上では5kV/m以上の電界にさらされることはありません。

「静磁界」「伝導電流」「交流高圧電界」の3つについては、発生源を確認できるため注意をして避けることが可能です。問題となるのはペースメーカ・ICD等の構造上十分に遮蔽できない強度の大きな「交流磁界」と「高周波電磁波(無線電波)」です。これらを防護できる製品が必要といえます。

万引き防止システム(EAS)装置の仕組(ペースメーカの不適切作動の原因)

万引き防止システムとは、店内の精算済みでない商品を持ち出す行為、すなわち万引き(商品窃盗)が行われたときに、警報音などで知らせるシステムです。
レンタルビデオ店、ドラッグストアや家電量販店などの様々な業態の小売店や図書館などで採用されており、技術方式の違いから音響磁気方式(周波数:58kHz~60kHz)、電波方式(周波数:4.6MHz~10.5MHz)、磁気方式(周波数:200Hz~14kHz)、自鳴方式(周波数:22kHz~8.2MHz)の4種類に区分されます。

ペースメーカ・ICD等のリード線や通信用テレメトリコイルが作るループ面に交流磁界が錯交するとペースメーカ・ICD等回路内部に電圧が誘起され、ペースメーカ・ICD等の誤動作に原因となります。ゲート送信側に向かって平行になったときの最も強い磁界の影響を受けます。

リード線や通信用テレメトリコイルがゲート送信側に向かって垂直になった場合強い交流磁界はほとんど錯交しないので電圧はほとんど誘起されません。しかし交流磁界は多方向に流れるものがありますので、リード線や通信用テレメトリコイルが作るループ面に回り込んだ交流磁界が錯交し電圧が誘起されます。結果として、体の前後に防磁パッド(EMSパッド)を使用することで交流磁界は大幅に減少し、ペースメーカー・ICD等への影響は小さくなります。

ペースメーカ・ICD等の不適切動作防止と弊社電磁波防護服

電磁波によるペースメーカ・ICDの不適切作動は、ペースメーカ・ICD等の内部回路に閾値を超える電圧が誘起されないようにすれば生じなくなります。とはいうものの電磁波を遮蔽する素材を衣服に用いれば解決するという単純なものではありません。
電磁波には回り込みや反射、輻射という性質があります。遮蔽性能が高すぎる素材は反射や輻射の影響が大きくなり、人体内で電磁波が強い場所(ホットスポット)ができてしまいます。それらの性質を考慮したうえ、最適な素材と遮蔽性能を選択し、試作した電磁波防護服を人体ファントムに着用させ、実際にペースメーカ・ICD等の不適切作動を抑止する効果があるかを試験する必要があります。
弊社の製品は人体ダミー試験を実施し性能を確認しているだけでなく、2004年より延べ3万人以上のペースメーカ・ICD等装着者が使用されておりますが、不適切作動が起きた事例はございません。

医療機器

薬事法より指定されている医療機器は、「疾病の診断・治療・予防」または「身体の構造や機能に影響を及ぼすこと」を目的とする器具器械のことを言います。このことからペースメーカは「医療機器」に当たります。また、通常は「医療機器」に該当しないとされているものであっても、使用目的や広告・表示内容から、「医療機器」として規制される場合があります。

<使用目的から医療用具に該当する例>

例1 はさみ

紙などを切るための工作用の「はさみ」であれば医療機器ではありませんが、手術時に組織の切開等に用いる医療用の「はさみ」であれば医療機器となります。

例2 低周波治療器

筋肉トレーニングを目的として使用する「低周波運動器具」であれば医療用具ではありませんが、治療を目的として使用する「低周波治療器」であれば医療機器となります。

例3 電磁波防護服

ペースメーカ・ICD等の電磁波による誤動作やカプセル内視鏡の電磁波による画像の乱れなど、器機への影響を防ぐ目的で使用する「電磁波防護服」は医療機器ではありませんが、MRI検査時に電磁波暴露から人体を守る目的で使用する「電磁波防護服」は医療機器となります。

福祉用具

福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律第2条に「福祉用具とは、心身の機能が低下し日常生活を営むのに支障のある老人または心身障害者の日常生活上の便宜を図るための用具及びこれらの者の機能訓練のための用具並びに補装具を言う。」と規定されています。平成12年に施行された「介護法」では、「心身の機能が低下し日常生活を営むのに支障がある要介護者等の日常生活上の便宜を図るための用具及び要介護者等の機能訓練のための用具であって、要介護者等の日常生活の自立を助けるためのものをいう。」としています。

ペースメーカ装着者用電磁波防護服は障害者の日常生活の制限をなくすための用具ですので福祉用具に当たります。福祉用具はその用途に応じた呼び名として補装具、自助具、日常生活用具、介護用具、機能訓練用具などがあります。

補装具

補装具とは、次の3つの定義を全て満たすものとされています。

  • 身体の欠損又は損なわれた身体機能を補完、代替するもので、障害個別に対応して設計・加工されたもの。
  • 身体に装着(装用)して日常生活又は修学・就労に用いるもので、同一製品を継続して使用するもの。
  • 給付に際して専門的な知見(医師の判定書又は意見書)を要するもの。

補装具の種目として盲人安全つえ、義眼、眼鏡、点字器、補聴器、人工喉頭、義手、義足、座位保持装置、車いす、歩行器、収尿器、歩行補助つえ、電動車いす、頭部保護帽、ストマ用装具などがあります。

自助具

自助具は身近な道具であり、生活を広げる小さな福祉用具です。例えば、「箸がうまく扱えない」「片手が不自由で爪が切れない」という時に、工夫された箸や爪きりを使うことで自分でご飯を食べたり、爪を切ることが出来るようになります。このように、障害や高齢により日常生活動に困難があるときに、それを助ける道具を自助具といいます。

日常生活用具

日常生活用具とは、次の3つの定義を全て満たすものとされています。

  • 安全かつ容易に使用できるもので、実用性が認められるもの。※「安全活用医に使用できるもの」とは、選定や使用に当たって障害者自身や市町村職員等で判断ができるものをいう。
  • 日常生活上の困難を改善し、自立を支援し社会参加を促進するもの。※「日常生活の困難」とは、日常生活のために行う基本的な毎日のようにくり返される活動上の困難をいう。
  • 制作や改良、開発に当たって障害に関する専門的な知識や技術を要するもので、日常生活品として一般的に普及していないもの。※「日常生活品として一般的に普及していないもの」とは、一般市場では入手が困難であり、主に当該障害を有する人のために使うものをいう

日常生活用具は重度の身体障害者・知的障害者が対象者となります。ペースメーカ装着者は3級以上の障害等級となり、重度身体障害者の範疇に入ります。この日常生活用具の多くは行政により給付もしくは貸与品目になっており、補助金や介護保険の対象となっております。

しかしながらペースメーカ装着者用電磁波防護服は一部の市区町村をのぞいて、現時点では補助金や介護保険の対象となっておりません。※三重県四日市市はペースメーカ用電磁波防護服に対して「四日市市身体障害者福祉機器等購入費補助金交付制度」があり、20,000円の購入補助金が支給されています。※東京都墨田区と港区では「日常生活用具の給付」制度により、20,000円までの購入補助(現金給付ではありません)を受けることが出来ます。

機能訓練用具

体の不自由な方々の日常生活や社会生活に必要な各種動作を訓練するために用いる用具のことを言います。運動訓練器具(平行棒など)、脊椎牽引療法用具(各種ぶら下がり機器など)、排泄訓練用具(失禁感知装置など)、発声・発語訓練器などがあります。

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